【プロスペクト理論】人はなぜ合理的に判断できないのか?

一般教養

今度の4月から会社員になる「けいすけ」です。

日常生活の中で、「あの時こうすればよかった」と後悔したり、「なぜあんな判断をしたのか」と自分を責めたりすることはありませんか?

実は、人間は本質的に合理的な判断を下すことが難しい生き物です。

この理由を説明する理論の一つに「プロスペクト理論(Prospect Theory)」があります。

今回は、このプロスペクト理論を基に「なぜ人は合理的に判断できないのか」について詳しく解説します。


1. プロスペクト理論とは?

プロスペクト理論は、1979年に心理学者のダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)とエイモス・トヴェルスキー(Amos Tversky)によって提唱されました。

この理論は、人間は利益と損失を非対称的に評価するという考えに基づいています。

というのも通常、経済学では人は常に合理的な判断をする(最大限の利益を得るように行動する)と考えられていました。

しかし、カーネマンとトヴェルスキーは「人間は感情や認知バイアスに支配されており、必ずしも合理的な判断をしない」と指摘したのです。

なんだかややこしいようにも見えますが、もう少しだけお付き合いください。(笑)


2. 利得より損失を大きく感じる「損失回避バイアス」

プロスペクト理論の中でも特に有名なのが「損失回避バイアス(Loss Aversion)」です。

例1. リスクを取ってよりお金をもらう選択をするか?

例えば、次の2つの選択肢を提示された場合、あなたはどちらを選びますか?

  • A:100%の確率で1万円をもらえる
  • B:50%の確率で2万円をもらえるが、50%の確率で何ももらえない

多くの人は「A」を選択します。

確実に1万円を手に入れる方が「損をしたくない」という心理が働くからです。

理論的にはBの期待値は1万円(2万円×50%)と同じですが、人間は「損失を回避する」行動を優先する傾向があるのです。

例2. リスクを取ってよりお金を失わない選択をするか?

さらに、次のケースではどうでしょうか?

  • C:100%の確率で1万円を失う
  • D:50%の確率で2万円を失うが、50%の確率で何も失わない

この場合、「D」を選ぶ人が増えることが分かっています。

なぜなら、「確実な損失」を避けたいと感じるからです。

人は利益よりも損失に対して強い感情を持ち、結果的に非合理的な判断をしてしまうのです。


3. 参照点による判断の違い

プロスペクト理論では「参照点」も重要な役割を果たします。参照点とは、判断する際の基準となるものです。

例3. 同じ8万円の出費でも?

例えば、

  • 定価10万円の家電を8万円で買えた場合、2万円得したと感じます。
  • しかし、定価7万円の家電を8万円で買う場合は1万円損したと感じます。

同じ「8万円」という金額でも、基準となる参照点が異なるだけで「得した・損した」といった感情が大きく変わるのです。

この参照点の変化によって、人間は非合理的な判断をしてしまうのです。


4. なぜ人は合理的に判断できないのか?

ここまで解説したプロスペクト理論をまとめると、人間が合理的に判断できない理由は次の3つです。

1.損失を過大評価する

人間は「損失回避バイアス」により、損失を利益よりも強く感じます。そのため、結果的に非合理的な判断を下してしまうことが多くなります。

2.参照点が変わると判断基準が変わる

同じ出来事でも「参照点」が変わることで、得・損の感じ方が大きく異なります。これが合理的な判断を妨げる要因となっています。

3.感情に左右される

カーネマンは著書『ファスト&スロー』の中で「人間は感情に大きく左右される存在」であることを指摘しています。

瞬時の感情が意思決定に大きく影響を与え、結果的に非合理的な判断をするのです。


まとめ

人間が「合理的に判断できない理由」は、プロスペクト理論によって科学的に説明されています。

損失を強く感じるバイアスによって、得よりも損を回避しようとする心理。
参照点の違いによって、判断基準が変わってしまう現象。
感情の影響によって、瞬間的な非合理的判断を下してしまう。

これらの特性を理解しておくと、日常生活やビジネスシーンでも「冷静に判断しよう」と意識できるようになります。

ぜひプロスペクト理論を活用し、より合理的な選択ができるよう意識してみてください。

では、また次の投稿でお会いしましょう、今日もありがとうございました!


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