法の下の平等Ⅱ~推定嫡出と再婚禁止期間~101(憲法⑥)

憲法

こんにちは、けいタンです。

今日はかなり時間が空いてしまいましたが、

久しぶりに6回目となる日本国憲法(憲法)について話していきたいと思います。

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今回のテーマについて

そして今回のテーマは前回に引き続き「法の下の平等~推定嫡出と再婚禁止期間」についてです。

前回の話の大きなテーマは「男と女(前半)」というものでした。

ではせっかくなので、前回の内容のおさらいをここでしておきましょう。

前回の内容のおさらい

ちょっとだけ前回の内容を確認しましょう。

男女平等は男女無差別なのか?

そもそも憲法に「法の下の平等」の原則があるのだから、両性は平等に扱われるべきだといっても、

男と女の事実上の違いをまったく無視するのは実際には難しいです

また現在の法律でも、男性と女性がすべての点でまったく無差別に扱われているかというと、

決してそういうわけではありません。

例えば、労働基準法では、

産前産後の休暇や生理日の休暇の規定は女性だけに適用されます

そのような意味でも、憲法の男女平等の原則は決して無差別主義ではないのです。

なぜなら、男性と女性がどんな点においてもまったく同じように取り扱われると、

かえって不合理なこともありうるからです。

再婚禁止期間を取り入れる理由

日本の法律(民法)では、男性は離婚した次の日に別の女性と再婚できます

ですが、一方で女性は離婚して別の男性と再婚しようとすると100日間待たなくてはならないのです。

この期間のことを「再婚禁止期間」と呼ぶのですが、

一体なぜ何のためにこのような再婚禁止期間は設けられているのでしょうか?

代表的な答えとして、

そもそも日本も含めて再婚禁止期間を設けている国のほとんどは、

女性だけにこういったような期間を設けているのですが、

その理由は主に「血族の混乱を防止して父性推定を可能にする」ということでした。

以上で簡単な前回の内容のおさらいは終わりです。

では早速、今回の内容である「法の下の平等~推定嫡出と再婚禁止期間」について

見ていくことにしましょう。

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今回のテーマに関する日本国憲法

第14条1項:すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

第24条1項:婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

第24条2項:配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

※参考 日本国憲法条文一覧リンク 日本国憲法|条文|法令リード (hourei.net)

嫡出推定について

嫡出子について考えてみよう

「推定」という用語の法律的な意味あい

日本の民法をよく見てみると、次のような規定がありました。

まずはご覧ください。

(嫡出の推定)第772条

  1. 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
  2. 婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

この民法第772条の条文について考えてみましょう。

まず第1項は一見すると、当たり前のことのように思われます。

しかし子供は、必ずしも結婚している夫婦の子供であるとは限りません

あくまでも、結婚している二人の子供だろうという「推定」がはたらくだけで、

夫が自分の子でないことを立証すれば、妻が婚姻中に懐胎した子ではあるが、

夫の子であるという推定は破られるということになります。

法律上の「推定」という用語は、そういう意味を持っているのです。

Aの子供?Bの子供?

思ったよりも解釈が大変な民法第772条の第1項でしたが、

むしろより問題なのは第2項なのではないでしょうか。

この第2項の規定については、以下のようにまとめておきました。

Aの子供?Bの子供?
  • Xが夫Aと離婚した日から300日以内に産んだ子供
    →その子はXがAと結婚していた間に懐胎したAの子供と推定する
  • XがBと再婚した日から200以後に生まれた子供
    →その子はXがBと再婚してから懐胎したBの子供と推定する

というわけです。

ヒトの妊娠期間はおおよそ280日ほどなので、

Aと離婚後300日以内に生まれた子供が再婚した夫Bである可能性は低いですし、

逆に、再婚後200日以上経ってから生まれた子供が、

離婚前の夫Aの子供であることも考えにくいということです。

もちろんここでも、あくまでも「推定」にすぎないので、AやBが自分の子供ではないことを

きちんと立証すれば、そのような推定は破られることになりますね。

再婚禁止期間について

女性だけに設けられた再婚禁止期間

再婚禁止期間は憲法違反?差別?

ということで、もしこのような方法で本当に自分の子供の父親が推定できるのだとしたら、

やはり、100日間の女性の再婚禁止期間を設けておけばよいということになります。

しかしながら、女性についてだけこのような再婚禁止期間を設けているので、

この規定は女性(X)が再婚する自由を不当に制限しており、

性別による差別を禁止している憲法14条1項(上の「今回のテーマに関する日本国憲法」を参照)に

違反する不合理な差別ではないか、ということが問題となります。

(学者の方々の間でも、再婚禁止期間の趣旨そのものについて賛否両論があるそうです…。)

最高裁判所による判例

ちなみに、この規定(再婚禁止期間)の合憲性は裁判でも争われましたが、

最高裁判所は1995年の判決で、

民法733条の立法趣旨は

「父性の推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解される」

として、憲法違反の主張を退けました。

(※2015年に女性の再婚禁止期間が180日から現在の100日間に変わった。)

再婚禁止期間ってやっぱり必要なのか?

しかし現代の医学では、妊娠しているかどうかということは、

かなり早い段階で、しかもほぼ確実に判定できるようになっていますね。

なので、再婚禁止期間を決めておかなくても、女性Xが妊娠しているかどうかさえはっきりすれば

すぐに再婚を認めても何の不都合もない、ということにもなりそうですね。

また70歳の女性が夫が仮に先立たれたあと、

とても気の合う人を見つけて再婚したいと思った場合を考えてみれば、

この女性に再婚禁止期間を適用するのはナンセンス(不必要)ですよね

このような場合については、実務上も733条第1項を適用せずに再婚を認めた、

といった例もあるようです。

まとめ~男女差別は少しずつなくなってきた!

いかがだったでしょうか。

今日は「最後のまとめ」がありませんので、少しだけ男女差別と法改正について振り返りましょう。

男女共同参画社会の形成を!

現在では、男女差別は少しずつなくなってきています。

例えば、女性の就職問題については、以前は企業の単なる「努力義務」にすぎず、

実際には深刻な就職差別がまかりとおっていました

まあ、今では男女雇用機会均等法の改正や男女共同参画社会の形成の積極的な推進により、

就職時の募集や採用、配置・昇進・定年・退職などの点で

「女性に対して男性と平等な機会を与えなくてはならない」ことになりました。

そんな男女共同参画社会の形成について、今後の発展にも期待ですね。

家族や友人と法の下の平等について話し合いましょう!

ここまで、お付き合いしてくれた方は少しでも「法の下の平等~推定嫡出と再婚禁止期間」ということ

についてちょっとは意識してくれたんじゃないでしょうか。

まずは、とにかくいろんなことを知ることから始まります。

いろんな情報を踏まえたうえで自分のなりの意見を持ってもらったらいいですね!

そしてまた、こういう議題で友達や家族とディスカッションしてみるのも面白そうですね。

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それでは最後まで見ていただきありがとうございました。

それでは、またいつかお会いしましょう。けいタン
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